沙羅双樹満開録

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明晰夢

深い闇の中で

「〇〇」

僕の名を呼ばれた気がした

 

 

 

ふと、目が醒めた

寝起きの微睡みはなかった

どうやらソファでいつの間に寝ていたようだ

お母さんがいる

妹がいる

当たり前だ

日常があった

 

 

でも、

僕は起きてからずっと何かに怯えている

不安があった

駆り立てられるような

不安があった

 

ねえ、お母さん今日って何日?

今日はしちがつきゅうじゅうくにちですよ

え?

7月は31日までだし、今は8月ではないか。

 

そうか

これは夢なんだ

明晰夢というやつか

 

 

ふと、不安がよぎった

愛していた友がみんな消えた

見て確かめたわけでもないのになぜかはっきりとした頭に残る

明晰な恐怖

これは夢なのに

なぜか

僕を包む暗鬱とした予感

 

声に出そうとしてもなぜか出てこない

体が動かない

まるで心臓が冷え切ってしまったかのように

動かせない

 

 

そうだった

友達を愛さないと

そう思って

いつのまに僕は溢れんばかりの愛や幸せに埋没してしまっていたみたいだ

そこまで考えたら

ふと、目がさめた 

END